EGYPT / GIZA

ギザの三大ピラミッドはなぜ謎だらけ?世界遺産の建設方法を解説

エジプトのギザに立つクフ王・カフラー王・メンカウラー王の三大ピラミッド。約4500年前の建造物が、なぜ今もなお謎に包まれているのかを最新研究とともに紹介します。

テレビの特集でギザの三大ピラミッドの航空写真を見たとき、あまりに正確な四角形に「これ、本当に4500年前に人の手だけで作ったの?」と気になって調べ始めたのがきっかけです。調べれば調べるほど、ピラミッドは「大昔の巨大な墓」という一言では片づけられない、謎だらけの建造物だとわかってきました。今回はOWT編集部が、世界遺産に登録されているギザの三大ピラミッドについて、基本データから最新の研究成果まで、子どもから大人まで楽しめるようにまとめてみます。

第I章 ギザの三大ピラミッドって、そもそも何?

ギザの三大ピラミッドは、エジプトの首都カイロ近郊にある「ギザ台地」に立つ、クフ王・カフラー王・メンカウラー王という3人の王様(ファラオ)のお墓です。1979年に「メンフィスとそのネクロポリス死者の都市という意味」の一部として世界遺産に登録されました。登録基準は(i)人類史上でも比類のない建築の傑作であること、(iii)古代エジプトの王権や葬送文化を伝える証言であること、(vi)古代エジプト文明の信仰や技術と深く結びついていること、の3つです。

三大ピラミッドの規模比較

王(ファラオ) 高さ 底辺 主な石材
クフ王(最大) 約146.5m 約230m 地元の石灰岩+花崗岩
カフラー王 約143.5m 約215m 地元の石灰岩+花崗岩
メンカウラー王(最小) 約65m 約105m 石灰岩+アスワン産花崗岩

一番大きいクフ王のピラミッドは、使われた石の数がおよそ230万個、平均の重さは1個あたり約2.5トンといわれています。これは大人のサイ1頭分くらいの重さです。しかも一番重いブロックは約80トン、電車1両分に近い重さのものまであります。建設されたのは第4王朝の時代、紀元前26世紀ごろで、クフ王のピラミッドだけで推定10〜20年かけて作られたと考えられています。

ギザの三大ピラミッドを地上から見上げた石積みの様子がわかる写真
クフ王のピラミッドの石積み。1つ1つのブロックが数トンにもなる。

第II章 なぜ「謎だらけ」と言われるのか?建設方法の最新学説

230万個の石を、どうやって運んだのか

一番よく知られているのは、湿らせた地面の上でソリを使い、ロープとてこで石を引き上げたという説です。ただし、その先の「ランプ(斜路)が外側にあったのか、内側にあったのか」は今も議論が続いています。さらに近年注目されているのが「水上輸送」です。2013年に見つかった監督官メレルの日誌には、石灰岩を船でギザまで運んだ記録が残っており、ナイル川とつながる運河・港がギザの近くまであった可能性が高いとされています。つまり、長い距離は船で運び、最後の区間だけを陸路で引いた、という考え方が今のところ最も有力です。2026年に発表された最新の研究では、ピラミッドの外壁沿いに内部ランプを螺旋状にめぐらせ、約1万人規模の労働力で14〜21年ほどで完成できるという物流モデルも提案されています。

働いていたのは奴隷ではなかった?

「大量の奴隷が鞭で打たれながら作った」というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、現在の主流の考古学では、この説はほぼ否定されています。ギザの南東で見つかった労働者の町「ヘイト・エル=グラブ」からは、住居やパン焼き窯、ビール醸造所、行政施設まで見つかっており、給料としてパンとビールが配られ、動物性のタンパク質も豊富に支給されていたことがわかっています。労働者のお墓からは骨折が治った跡のある骨も多く見つかっていて、きちんとした医療ケアを受けていたこともうかがえます。つまりピラミッド建設は、国が組織した大規模な公共事業に近いものだった、というのが今の理解です。

2023〜2025年、今も続く新発見

ピラミッドの謎はまだ解明しきれていません。2017年には宇宙線を使った「ミュオン測定」という技術で、大回廊の上に30m以上の未知の空洞(ビッグ・ボイド)が見つかりました。2023年にはピラミッドの北面から「ノースフェイス・コリドー」という長さ約9mの通路が新たに特定され、2025年には複数の探査手法でこの通路が実際に空気を含む空間であることが確認されています。4500年前に作られた建物の中に、まだ人類が足を踏み入れていない空間が残っているというのは、なんともロマンがありますね。なお、スフィンクスについては、クフ王の息子であるカフラー王の時代に作られたとする説が主流です。オリオン座の並びとピラミッドの配置が一致するという「オリオン座相関説」は、話としては面白いのですが、現在の考古学・天文学では裏付けが弱く、主流の学説としては認められていません。

エジプト考古省が発表したギザ台地の大スフィンクスとピラミッドの位置関係を示す写真
大スフィンクスは、カフラー王のピラミッド複合体の一部として作られたと考えられている。

自由研究コーナー:ギザのピラミッドをもっと知ろう

ここからは学年別に、ピラミッドの「なぜ?」をもう少し深掘りしてみます。気になるところだけタップして読んでみてください。

小学生向け
ピラミッドの石って、どれくらい重いの?

一番大きいクフ王のピラミッドには、およそ230万個もの石が使われています。1個の重さは平均2.5トンで、大人のサイくらいの重さです。中には80トン、電車1両分くらい重い石も使われています。それをクレーンもトラックもない時代に、人の力だけで積み上げたと考えると、本当にすごいことですよね。

中学生向け
ピラミッドの中にある「通気孔」の謎

クフ王のピラミッドの内部には、細長い通路(シャフト)が4本あります。「王の間」の2本は外までつながっていますが、「女王の間」の2本は途中で石にふさがれていて、まだ先がどうなっているのか完全にはわかっていません。単なる換気口だったのか、星を見るための道だったのか、専門家の間でも意見が分かれています。また、ピラミッドの南側からは、王が死後に太陽神とともに空を渡るための「太陽の船」も見つかっています。

高校生・大人向け
天文学的な配置は本当なのか

クフ王のピラミッドは、真北からのずれがわずか0.06度ほどしかなく、当時の天文観測の精度の高さがうかがえます。一方で「三大ピラミッドの配置がオリオン座の並びと一致する」というオリオン座相関説は、天文学者による検証で図が反転されていたことなどが指摘されており、現在の主流の学界では疑似考古学として扱われています。ロマンのある話ではありますが、記事や資料を読むときは「まだ証明されていない仮説」として扱うのが安全です。

あわせて読みたい

出典

  • UNESCO World Heritage Centre, “Memphis and its Necropolis – the Pyramid Fields from Giza to Dahshur”
  • Britannica, “Great Pyramid of Giza”
  • National Geographic, “How were the Giza pyramids built?”
  • Smithsonian Magazine, “Uncovering the Secrets of the Sphinx” / 労働者の食生活に関する記事
  • Nature Communications (2023), “North Face Corridor” 論文
  • AERA (Ancient Egypt Research Associates), “The Lost City of the Pyramid Builders”
  • PBS NOVA, “Who Built the Pyramids?”
  • エジプト観光・考古省 公式サイト (egymonuments.gov.eg)
  • 外務省 海外安全ホームページ(エジプト)

本記事は上記の一次資料・公的機関の情報をもとにOWT編集部が2026年8月時点の情報として作成しました。現地の料金・営業時間等は変動する場合があるため、渡航前に公式サイトでの再確認をおすすめします。