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ギザのピラミッド内部はどうなっている?未発見の大空洞と通気孔の謎に迫る

4500年前に完成した巨大建造物の内部には、実は今も正体不明の空間が眠っています。2017年に見つかった「ビッグ・ヴォイド」から通気孔の謎まで、最新の探査技術が明らかにした内部構造をじっくり解説します。

以前ピラミッドの建設方法について調べていたとき、「実は内部にまだ正体のわからない空間が残っている」という一文を見つけて、それ以来ずっと気になっていました。4500年も前に完成した建造物なのに、いまだに中身が完全にはわかっていないなんて不思議じゃないですか。今回はOWT編集部が、クフ王のピラミッド内部の基本構造から、2017年・2023年に見つかった新発見、そして「通気孔」と呼ばれる謎の細い穴の役割まで、最新の探査技術の話も交えてじっくり掘り下げていきます。

第I章 クフ王ピラミッド内部の基本構造を知ろう

ギザで一番大きいクフ王のピラミッドには、内部に大きく3つの部屋(玄室)があることがわかっています。まずはこの基本構造を押さえておきましょう。

地下玄室(未完成の部屋)

ピラミッドの真下、岩盤を直接掘り込んで作られた部屋です。工事の途中で放棄された可能性が高く、床が未完成のままになっていることから「未完成の地下玄室(Unfinished Subterranean Chamber)」と呼ばれています。なぜ工事が止まったのかは、はっきりわかっていません。

女王の玄室

ピラミッドのほぼ中央、地上からやや上がった位置にある部屋です。「女王の玄室」という名前がついていますが、実際に王妃が埋葬されていたという確かな証拠はなく、後世につけられた通称にすぎません。この部屋からも、南北2本の細い通気孔(シャフト)が伸びています。

王の玄室

ピラミッドのさらに上部、大回廊(グランド・ギャラリー)と呼ばれる高さ8.6m・全長47mにも及ぶ壮大な傾斜通路を上りきった先にある部屋です。壁は硬い花崗岩で覆われ、中には蓋のない石棺だけがぽつんと残されています。副葬品やミイラは一切見つかっておらず、盗掘されたのか、そもそも最初から空だったのかも議論が続いています。ここにも南北2本の通気孔があり、いずれも角度や方角が正確に計算されていることがわかっています。

第II章 2017年発見「ビッグ・ヴォイド」の正体とは

2017年11月、世界中の考古学ファンを驚かせたニュースが飛び込んできました。学術誌Natureで発表された「ScanPyramids」プロジェクトの成果で、王の玄室の真上に、高さ30m以上にもなる巨大な未知の空洞(ビッグ・ヴォイド)が存在することが確認されたのです。これは19世紀以来、ピラミッド内部で見つかった初めての「大きな構造」でした。

この発見に使われたのが「ミュオンラジオグラフィ」という技術です。ミュオンとは、宇宙から絶えず降り注いでいる素粒子の一種で、物質を通り抜ける性質を持っています。ただし、通り抜ける物質の密度が高いほどミュオンの数は減っていくため、ピラミッドの内部を通過してきたミュオンの量を測定すると、内部に空洞があるかどうかがレントゲン写真のようにわかる仕組みです。研究チームは3種類の異なる検出装置を使い、それぞれ独立した解析でこの巨大空洞の存在を確認しました。複数の手法で同じ結果が出たことから、信頼性の高い発見として国際的に評価されています。ただし、この空間が何のために作られたのか、単なる建設上の空間なのか、それとも別の目的があったのかは、2026年8月時点でもまだわかっていません。

ギザの大ピラミッド内部にある王の玄室の花崗岩の壁と石棺を写した写真
王の玄室は硬い花崗岩の壁で囲まれ、蓋のない石棺だけが残る。(image)

第III章 2023年発見「北面回廊」は何のためにあったのか

ビッグ・ヴォイドの発見から6年後の2023年3月、今度はピラミッドの北面から、地上に近い位置に約9mの未知の通路が新たに特定されました。「ノース・フェイス・コリドー(North Face Corridor)」と名付けられたこの通路は、天井に「シェブロン」と呼ばれるジグザグ模様の装飾が施されているのが特徴です。この装飾は、上に乗る石の重みを分散させるための構造的な工夫としても知られており、ほかの重要な空間の近くでも使われている技法です。

この通路が何のために作られたのかについては、研究者の間でも見方が分かれています。有力な候補の一つは、クフ王の本当の埋葬場所につながる入口だったのではないかという説ですが、これもあくまで仮説の一つにすぎません。ビッグ・ヴォイドと合わせて、「4500年前に完成したはずの建造物に、21世紀になってもまだ新しい発見がある」という事実そのものが、ピラミッド研究の奥深さを物語っています。

第IV章 通気孔(シャフト)は空気穴なのか、星への道なのか

王の玄室と女王の玄室には、それぞれ南北2本ずつ、合計4本の細い通気孔(シャフト)が伸びています。幅はわずか20cm四方ほどしかありません。長年「換気のための空気穴」と説明されることが多かったのですが、このサイズでは実際の換気にはほとんど役に立たないと指摘されています。そこで近年有力視されているのが、特定の星や方角を指すように設計された「星軸シャフト説」です。たとえば王の玄室の北側シャフトは、紀元前2700年ごろに北極星の位置にあった星「トゥバン(りゅう座アルファ星)」の方向を指すように計算されていたと考えられています。この星への方位の話は、ピラミッドの天文学的な意味を扱う記事でさらに詳しく掘り下げる予定です。いずれにしても、単なる建築上の抜け穴ではなく、当時の高度な測量技術と天文知識を反映した設計だったとみる研究者が増えています。

第V章 空洞を発見した最新探査技術のしくみ

ピラミッドを傷つけずに内部を調べる非破壊調査には、いくつかの最先端技術が使われています。

技術 しくみ 代表的な成果
ミュオンラジオグラフィ 宇宙線由来の素粒子の透過量で密度差を可視化 ビッグ・ヴォイド(2017)の発見
熱赤外線サーマル撮影 昼夜の温度差から内部の隠れた空間を推定 表面直下の異常温度域の特定
GPR(地中レーダー) 電波の反射パターンから地下の構造を推定 地盤・水分状態の把握
SAR(合成開口レーダー) 衛星等から地表・地下の反射データを解析 一部で地下巨大都市説の根拠に(要注意、後述)

ここで一つ注意しておきたいのが、SAR(合成開口レーダー)を使った調査をめぐる「地下2kmに巨大な地下都市がある」という主張です。2025年ごろからインターネット上で急速に広まりましたが、これは元になった研究データを大きく誇張・拡大解釈したもので、エジプト考古省や多くの考古学者からは「検証可能な物的証拠はない」として正式に否定されています。ギザ台地は地下水位が高く、レーダー解析ではノイズを巨大構造物と誤認しやすいことも指摘されており、2026年8月時点では「根拠の乏しい主張」として扱うのが適切です。ビッグ・ヴォイドや北面回廊のように、複数の独立した手法・研究チームによって確認され、査読つきの学術誌に発表された発見と、SNSで話題になっただけの未検証の主張とは、区別して受け止めることが大切です。

ギザの大ピラミッド北面の石灰岩ブロックを間近で写した写真
2023年に未知の通路が見つかったピラミッド北面の石積み。(image)

自由研究コーナー:内部構造の謎をもっと知ろう

ここからは学年別に、ピラミッド内部の「なぜ?」をもう少し深掘りしてみます。気になるところだけタップして読んでみてください。

小学生向け
「ビッグ・ヴォイド」って何?

2017年に見つかった、ピラミッドの中にある大きな空っぽの空間のことです。高さは30m以上もあり、学校の建物がすっぽり入ってしまうくらいの大きさです。宇宙から降ってくる「ミュオン」という目に見えない粒子を使って、レントゲン写真のように内部を透かして見ることで発見されました。何のための空間かは、まだ誰にもわかっていません。

中学生向け
通気孔は本当に空気を通すためのもの?

実は疑わしいと考えられています。通気孔の幅はわずか20cm四方ほどしかなく、部屋の換気に使うには小さすぎるからです。最近は、特定の星の方角を指すように計算して作られた「星への道」だったのではないか、という説が有力になっています。古代エジプトの人たちが、星と死後の世界を強く結びつけて考えていたことと関係していそうですね。

高校生・大人向け
「地下2kmに巨大都市」説は信じていい?

現時点では信頼できません。ビッグ・ヴォイドや北面回廊は、複数の独立した研究チームがそれぞれ異なる手法で確認し、査読つきの学術誌(Nature、Nature Communicationsなど)に論文として発表された発見です。一方、「地下2kmの巨大都市」説はSAR(合成開口レーダー)のデータを拡大解釈したものがSNSで広まっただけで、エジプト考古省をはじめ専門家の多くが「検証可能な証拠はない」と否定しています。話題性だけで判断せず、査読を経た発表かどうかを確認する姿勢が大切です。

あわせて読みたい

出典

  • Nature (2017), “Discovery of a big void in Khufu’s Pyramid by observation of cosmic-ray muons”
  • Nature Communications (2023), North Face Corridorに関する論文
  • ScanPyramidsプロジェクト公式発表
  • Wikipedia, “Great Pyramid of Giza” / “Star shaft” / “ScanPyramids”
  • AERA (Ancient Egypt Research Associates)
  • Smithsonian Magazine, 地下異常構造の主張に関する記事(2024)
  • Jerusalem Post, SARスキャンをめぐる報道
  • BBC History, “Pyramid Builders”

本記事は上記の一次資料・学術誌・公的機関の情報をもとにOWT編集部が2026年8月時点の情報として作成しました。学説は今後の研究で更新される可能性があります。