サールナート様式の仏像

“仏像にも流派がある”― サールナート様式という頂点

グプタ朝の黄金期が生んだ、静かで洗練された美

美術館でいくつもの仏像を見ているうちに、「同じ仏像でも、ずいぶん雰囲気がちがうな」と感じたことがありました。調べてみると、仏像にも“流派”のようなものがあり、その中でも頂点のひとつとされるのが「サールナート様式」でした。今回は、インド仏像史を語るうえで外せない、この美しい様式の秘密に迫ります。

I. グプタ朝、美術の黄金時代

サールナートの美術が最高潮に達したのは、グプタ朝(4〜6世紀ごろ)です。インドの考古資料でも、この時代はサールナート美術の“黄金期”と呼ばれ、最良の仏像群が生み出され、ダメーク・ストゥーパに精緻な石装飾がほどこされました。

同じころ、北インドではマトゥラーという町でも仏像づくりが盛んでした。サールナートとマトゥラーは、いわば仏教美術の二大ブランド。両者を見くらべると、地域ごとの個性がよくわかります。

サールナート様式の仏像が結ぶ転法輪印(説法の手印)の接写。グプタ美術の繊細な彫り
両手で輪をつくる「転法輪印」。初めて教えを説くブッダの姿を表す

II. サールナート様式の特徴

サールナート様式の仏像は、ひと目で「静かだな」と感じさせます。その理由は、いくつかのはっきりした特徴にあります。

薄い衣
衣のしわをほとんど刻まず、体にぴたりと張りつくように表現。体の線が美しく見える
滑らかな表面
砂岩の表面をなめらかに磨き上げ、清らかな質感を出す
静かな内面性
半眼のおだやかな表情で、深い瞑想や内面の静けさを感じさせる
豪華な光背
頭の後ろに、精緻な文様の円い光背(こうはい)を配することが多い

とくに有名なのが、両手で法輪を回すしぐさ(転法輪印)を結んだ初説法の仏像。まさにサールナートにふさわしい、「初めて教えを説くブッダ」の姿です。

サールナート出土のチュナール砂岩による仏教彫刻の細部。グプタ朝の洗練された石彫表現
きめ細かな砂岩を磨き上げた、グプタ朝の洗練された彫り

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小学生向け|仏像の「顔」をかんさつしよう

図鑑やネットでいろいろな仏像の写真を集めて、顔や目、手のかたちをくらべてみよう。「おだやかな顔」「きびしい顔」など、どんな気持ちに見えるかな? いちばん好きな仏像をスケッチして、理由も書いてみよう。

中学生向け|マトゥラーとサールナートをくらべる

同じ時代の二大様式、マトゥラー様式とサールナート様式。衣の表現や顔つきがどうちがうかを写真で比較し、表にまとめてみよう。地域によって美の好みが変わるのはなぜか、考えるきっかけになるよ。

高校生向け|様式の伝播と東アジアの仏像

グプタ朝の洗練された仏像様式は、その後アジア各地へ広がり、東南アジアや東アジアの仏像にも影響したとされる。日本の仏像とのつながりも視野に入れ、「サールナート様式が世界の仏教美術に与えた影響」をユーラシア交流史として論じてみよう。

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