コンドミニオ劇場を上から見た写真をながめていたとき、客席がきれいなU字――というより馬のひづめのような形にぐるりと並んでいるのに気づきました。これはただの飾りなのか、それとも何か意味があるのか。気になって調べてみると、この形には「見やすさ」と「音の良さ」の両方を追い求めた工夫がぎゅっと詰まっていました。今回は劇場の建築と音響のひみつを見ていきますね。
第I章 かたちは一つじゃなかった
中部イタリアの劇場を見比べていくと、じつは平面のかたちがさまざまだと気づきます。U字形、鐘のような形、楕円、卵形、そして馬蹄形。これらは思いつきでバラバラに作られたのではなく、「どうすればもっと見やすく、もっと音が良くなるか」を試行錯誤した歴史そのものなのです。やがて19世紀になると、馬蹄形が標準として定着していきます。この劇場群は、その”進化の過程”をまとめて見られる貴重な場所でもあります。
馬蹄形は、多くの観客が舞台をほどよい角度から見られると同時に、音が客席のすみずみまで回り込みやすい形でした。ぐるりと囲む客席の壁(ボックス席の連なり)が、音を適度に反射させたり吸収したりして、響きすぎず・こもりすぎない状態をつくり出します。「見る」と「聴く」を同時に成り立たせる、よく考えられたかたちなのです。

第II章 建物ぜんたいが「楽器」だった
これらの劇場は、頑丈な石造りの躯体(くたい)に、木をふんだんに使った内装を組み合わせています。じつはこの「石+木」の組み合わせが音のカギです。石の壁が音を建物の中にしっかり閉じ込め、木の内装がまるで楽器のように音をあたたかく響かせる。ボックス席の仕切りや床、天井まで、あちこちで音を細かく散らすことで、大きな声を張り上げなくても歌声がすみずみまで届くよう設計されていました。

オーケストラピットの役割
舞台の手前を見ると、一段低くなった空間があります。これがオーケストラピット。演奏者をここに配置することで、楽器の音が客席の視界をさえぎらず、しかも歌手の声とバランスよく混ざり合います。楽器の音が大きすぎて歌がかき消される、という事態を避けるための知恵ですね。舞台・客席・ピットの三つが、ひとつの響きをつくるチームのように働いていたのです。
科学が裏づける”良い響き”
近年では、こうした歴史的な劇場の音響を実際に測定して分析する研究も進んでいます。数百年前の職人たちが経験と勘で積み上げた工夫が、現代の音響科学から見ても理にかなっていることが少しずつ明らかになってきました。図面や計算式がなかった時代に、耳と手だけでここまでの響きをつくり上げたと考えると、その技術の高さに驚かされます。
自由研究にも使える!馬蹄形と音響トリビア
劇場の形と音のふしぎにまつわる豆知識を3つ。学年に合わせて選んでみてください。タップで答えが開きます。
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