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チューニョとキープとは?
凍らせて保存するジャガイモと、文字の代わりの結び目。インカ帝国を支えた知恵
マチュピチュのことを調べていたとき、「インカ帝国には文字がなかった」と知って、それでどうやって大きな国をまとめていたんだろう、と不思議に思ったのが調べ始めたきっかけです。調べていくと、食べ物を何年も保存する「チューニョ」と、ひもの結び目で数を記録する「キープ」という、2つの知恵にたどりつきました。どちらも、山の上の街マチュピチュや、広い帝国の暮らしを支えた大切な技術です。この記事では、チューニョとキープのしくみを、子どもにも分かるように紹介します。
マチュピチュの全体像はマチュピチュとは?歴史と見どころからどうぞ。
※この記事にはPRを含みます。
この記事で分かること
- チューニョとは何か、どうやって作るのか
- インカ帝国の食料を守った倉庫「コルカ」
- キープとは何か、結び目でどう数を表したのか
- チャスキ(飛脚)とインカ道が情報をつないだしくみ
チューニョはインカの保存食

凍らせて作るジャガイモ
チューニョは、アンデスの高地で作られるジャガイモを凍らせて乾かした保存食です。見た目は小さくて黒っぽい、カチカチの石のようなジャガイモで、水でもどしてスープや煮込み料理に使います。
チューニョのいちばんの特徴は、何年も保存できること。生のジャガイモはすぐに芽が出たり腐ったりしますが、チューニョにすると水分がほとんど抜けるので、長いあいだ食べられる状態のまま保てるんです。
チューニョの作り方
チューニョ作りには、アンデスの冬(6〜7月ごろ)の気候がぴったりです。この時期の高原は、夜は氷点下まで冷えこみ、昼は強い日差しで乾燥するという、寒暖差の大きな天気が続きます。
STEP 01
夜に凍らせる
ジャガイモを地面に並べ、夜の寒さで凍らせる
STEP 02
昼に解かす
昼の日差しで解かし、水分を出やすくする
STEP 03
足でふむ
数日くり返したあと、足でふんで水分をしぼり出す
STEP 04
しっかり乾かす
さらに日に当てて乾かし、軽くて硬いチューニョが完成
冷凍庫も乾燥機もない時代に、自然の寒さと日差しだけで「フリーズドライ」と同じことをしていたんですね。今のインスタント食品のしくみと考え方が近いのは、おもしろいポイントです。
豆知識:白いチューニョ
ふんだジャガイモを川の流れに数週間さらしてから干すと、白いチューニョになります。ペルーやボリビアでは「トゥンタ」や「モラヤ」と呼ばれ、苦みが少なく、ふつうのチューニョより高級品として扱われます。
ジャガイモ発祥の地アンデス
ジャガイモの故郷は、アンデス山脈のチチカカ湖のあたりだと考えられていて、数千年前から栽培されてきました。ペルーには今も数千種類のジャガイモがあるといわれ、色も形もさまざまです。
寒さに強いジャガイモは、トウモロコシが育ちにくい高地でも作れる大事な作物でした。そのジャガイモを長く保存できるチューニョは、天候不良で作物がとれない年へのそなえでもあったんです。
食料をたくわえた倉庫コルカ
インカ帝国では、チューニョやトウモロコシ、乾燥肉などをコルカと呼ばれる倉庫にたくわえていました。コルカは、風通しのよい山の斜面にずらりと並べて建てられ、中が湿りにくいように工夫されていました。
マチュピチュにも倉庫と考えられる建物がありますが、住人の食べ物の多くは、まわりの谷の畑から運ばれていたと考えられています。どこに、どれだけの食料があるのか。それを記録していたのが、次に紹介するキープです。
キープはチューニョを支えた記録術

文字の代わりの結び目
キープは、1本の太いひもに、たくさんの細いひもをぶら下げた道具です。細いひもには結び目がつけられていて、結び目の種類や位置で数を表していました。インカには、今知られているような文字がなかったため、キープが記録の役目を果たしていたんです。
キープは、税として納められた作物の量、倉庫の中身、人口などを記録するのに使われたと考えられています。今も世界の博物館などに数百本から1,000本ほどが残っています(数え方によって変わります)。
十進法で数を記録する
キープの数の表し方は、私たちと同じ十進法です。ひもの上のほうが大きな位、下に行くほど小さな位になっています。
| 位置 | 表すもの | 結び目の種類 |
|---|---|---|
| いちばん上 | 千の位など大きな位 | ひとつ結び |
| まん中 | 百の位・十の位 | ひとつ結び |
| いちばん下 | 一の位 | 長い結び(巻きつけた回数で数を表す) |
| 結び目なし | 0 | すき間を空けて表す |
さらに、ひもの色で「何の記録か」を区別していたと考えられています。たとえば、ある色はジャガイモ、別の色は人数、といった具合です。
キープカマヨックという専門職
キープを作ったり読んだりするのは、キープカマヨックと呼ばれる専門の役人でした。村ごとにキープカマヨックがいて、作物の量や人口を記録し、必要に応じて上の役所へ報告していました。
スペイン人の記録には、キープカマヨックがキープを指でたどりながら、何年も前の出来事まですらすらと読み上げた、という話も残っています。数字だけでなく、もっと多くの情報が記録されていた可能性もあるんです。
キープ解読の最新研究
キープがすべて解読されたわけではありません。しかし近年、少しずつ研究が進んでいます。2016年には、スペインの記録とキープを照らし合わせ、人口の記録が一致する例が見つかりました。
2017年には、研究者のサビーヌ・ハイランドが、ペルーの山村に伝わるキープを調べ、ひもの色や素材の組み合わせが95種類もあることを報告しました。これだけ種類があれば、数字だけでなく言葉を表していた可能性もある、と考えられています。
チャスキとインカ道
キープの情報は、チャスキと呼ばれる飛脚が運びました。チャスキは道の途中にある小屋で待機し、次のチャスキへキープや伝言をリレー形式で手渡していきます。1日で200km以上も情報を運べたといわれています。
チャスキが走ったのが、インカ帝国全体を結ぶインカ道(カパック・ニャン)です。全長はおよそ3万kmにもなり、2014年には6か国にまたがる世界遺産に登録されました。マチュピチュへ続くインカ・トレイルも、このインカ道の一部です。
チューニョとキープのまとめ
チューニョは、アンデスの寒さと日差しを利用して作る、何年も保存できるジャガイモでした。そしてキープは、ひもの結び目と色で数を記録する、文字の代わりの道具です。食料をたくわえ、その量を正確に記録し、チャスキがインカ道で情報を運ぶ。この3つがそろっていたからこそ、インカ帝国は広い国を治め、マチュピチュのような山の上の街を支えられたんですね。

自由研究にチャレンジ!
記事の本文には書いていない豆知識をクイズにしました。タップすると答えが開きます。
【小学生むけ】知ってた?フライドポテトのジャガイモも、もとはアンデス生まれ?
答え:はい、ジャガイモはアンデスから世界に広がりました。
ジャガイモは16世紀にスペイン人によってヨーロッパに持ちこまれ、そこから世界中に広がりました。日本には17世紀ごろ、オランダの船でジャカルタ(ジャガタラ)から伝わったことから「ジャガイモ」と呼ばれるようになったといわれています。
調べ方のヒント:家にある野菜の「ふるさと(原産地)」を調べて、世界地図にシールをはってみよう。
【中学生むけ】知ってた?家の冷凍庫でチューニョは作れる?
答え:ミニ実験ならできます。
小さなジャガイモをゆでずに冷凍し、解かして水分を押し出す作業をくり返すと、チューニョに近いものができます。ただし、アンデスの強い日差しと乾いた空気がないと、しっかり乾かすのは大変です。実験するときは、おうちの人と一緒に、食べずに観察するだけにしましょう。
調べ方のヒント:冷凍・解凍の回数ごとにジャガイモの重さをはかり、水分がどれくらい減るかグラフにしてみよう。
【高校生むけ】知ってた?キープは「二進法のコンピューター」に近いといわれることがある?
答え:ひもの結び方を「データの符号」と見る研究があります。
キープのひもには、結び目の向き(S字・Z字)や、ひもを結びつける向きなど、2つのどちらかを選ぶ要素がいくつもあります。これを情報の「ビット」のように考え、どれだけの情報量を記録できたかを計算する研究も行われています。
調べ方のヒント:キープの要素(色・結び目の種類・向き)の組み合わせが何通りになるか、場合の数で計算してみよう。
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