アレッチ氷河とは?世界遺産の絶景と気候変動をやさしく解説
ヨーロッパ最大級の“氷の川”がつくる絶景と、いま静かに進む変化をたどります
スイスの絶景をあつめたテレビ番組を見ていたとき、山あいをうねうねと流れる真っ白な「氷の川」に目が釘づけになってしまったのが、この記事を書くきっかけでした。あれはいったい何なのだろうと調べてみると、それがヨーロッパで最大級の氷河「アレッチ氷河」で、しかも世界遺産にもなっていると知って、私はますます夢中になってしまったんです。今回は、そのアレッチ氷河がどこにあってどれだけすごいのか、そして今この氷の川に何が起きているのかを、できるだけやさしくまとめてみました。
この記事で分かること
- アレッチ氷河がどこにあり、どんな大きさの氷河なのか
- ユングフラウ-アレッチが世界遺産に登録された理由
- 氷河を間近で見られる展望台と、そこへの行き方
- 今アレッチ氷河で進んでいる後退(気候変動)の話
アレッチ氷河とは?世界遺産の絶景と見どころ
まずは、アレッチ氷河がいったいどんな場所で、なぜそんなに人を惹きつけるのかを見ていきましょう。

アレッチ氷河はどこにある?読み方も
アレッチ氷河(読み方はそのまま「アレッチひょうが」、英語ではAletsch Glacier)は、スイス南部のヴァレー州とベルン州にまたがるアルプスの山の中にあります。アイガー・メンヒ・ユングフラウという有名な三つの名峰のすぐ近くで、正式には「グロッサー・アレッチュ氷河(=大アレッチュ氷河)」とも呼ばれるんですよ。日本からだと少し遠く感じますが、地図で見るとスイスのちょうどまん中あたり、と覚えておくとイメージしやすいと思います。
ヨーロッパ最大級の氷の川の大きさ
アレッチ氷河は、ヨーロッパのアルプスでいちばん大きな氷河です。その長さはおよそ20〜23km。いちばん厚いところでは氷の厚さが約900mもあって、これはビルでいうと200階建てをはるかに超える深さです。しかも氷はじっと止まっているわけではなく、1年間に約150〜200mというゆっくりした速さで流れ続けています。「川」と呼ばれるのも納得ですね。
| 項目 | データ |
|---|---|
| 場所 | スイス(ヴァレー州・ベルン州) |
| 全長 | 約20〜23km(アルプス最大級) |
| 氷の厚さ | 最大で約900m |
| 流れる速さ | 1年に約150〜200m |
| 世界遺産登録 | 2001年(2007年に範囲を拡張) |
| 種別 | 自然遺産 |
ユングフラウ-アレッチが世界遺産の理由
アレッチ氷河をふくむこの一帯は、「スイス・アルプス ユングフラウ-アレッチ」という名前で、2001年にアルプスで初めての自然遺産として登録されました(2007年にさらに範囲が広がっています)。登録の理由は大きく3つ。ひとつは息をのむような絶景であること。ふたつめは、氷河が長い時間をかけて山や谷を削ってつくった地形の宝庫であること。そしてみっつめが、氷河がとけて後退したあとに、どんな植物が生えてくるかを観察できる「生きた実験室」であることなんです。この3つめは、あとで出てくる気候変動の話にもつながる大切なポイントですよ。
展望台から望むアレッチ氷河の名所
アレッチ氷河は、いくつかの展望台から見下ろすことができます。人気なのが、ロープウェイでのぼれるエッギスホルンやベットマーホルン(標高2,872m)といった展望台。眼下に真っ白な氷の川がどこまでも続く景色は、写真で見る何倍もの迫力だそうです。また、氷河のすぐ北には、ユングフラウヨッホという「ヨーロッパでいちばん高い駅(標高3,454m)」もあり、ここには(なんと!)ヨーロッパで最も高い場所にある郵便局まであるんですよ。
豆知識:氷河の水は飲めるの?
アレッチ氷河のとけた水は「軟水(なんすい。ミネラルの少ないやわらかい水)」で、味もクセが少ないと言われます。ただし現地では衛生面から、飲用は必ず案内表示に従ってくださいね。
アレッチ氷河への行き方とベストシーズン
日本からは飛行機でスイスへ入り、鉄道を乗り継いでいくのが一般的です。氷河の展望台へは、フィーシュやベットマーアルプといった村からロープウェイでのぼるルートがわかりやすいですよ。すぐ近くのユングフラウヨッホへ行くなら、インターラーケン東駅やグリンデルヴァルトから登山鉄道でアクセスできます。ベストシーズンは、山歩きを楽しむなら6〜9月ごろ、雪景色やスキーなら12〜4月ごろが目安です。
鉄道やロープウェイの料金・運行時間は季節によって変わりやすく、天候によって運休することもあります。実際に旅行を計画するときは、必ず公式サイトで最新情報を確認してください。旅行や費用に関する判断は、専門家や公式の案内にもご相談ください。
アレッチ氷河が消える?後退と気候変動
ここからは、いま世界じゅうが心配している「アレッチ氷河のこれから」についてのお話です。テレビ番組でも“地球規模の危機”として取り上げられていた、大事なテーマですよ。

アレッチ氷河はどれだけ後退したのか
アレッチ氷河は、長い年月のあいだに少しずつ短くなってきています。研究によると、1870年ごろからは合わせて約3.2km、1980年ごろからでも1.3km以上も末端が後退したと報告されています(測定の年によって数字には幅があります)。「氷の川」が、上流に向かってじりじりと縮んでいるイメージですね。かつて氷におおわれていた場所に、今は岩肌が顔を出しているのです。
氷河が縮むと地球に何が起きるのか
氷河がとけると、まず氷河からの水の量が変わり、川の流れや農業、電気(水力発電)にも影響が出るといわれます。さらに氷河は、地球がどれくらい暖まっているかを教えてくれる「大きな温度計」のような存在。だからこそアレッチ氷河の変化は、スイスだけでなく世界にとっての警告サインとして注目されているんです。
ここがポイント
「温暖化と氷河期、これから来るのはどっち?」という話を耳にすることがありますが、いま観測されているのは氷河の後退(=温暖化の進行)です。氷河は、地球の今を正直に映す鏡なんですね。
氷河のふちに広がる新しい命
氷がとけた後の地面は、しばらくすると小さな植物が芽を出し、少しずつ草原へと変わっていきます。世界遺産の登録理由にもなった「生きた実験室」とは、まさにこのこと。氷が消えた場所に、いつ、どんな植物が最初にやってくるのかを観察すると、自然の回復力と気候変動の進み具合が同時に見えてくるんです。悲しいだけの話ではなく、命の連鎖を学べる場所でもあるんですね。
アレッチ氷河の未来を守るためにできること
「巨大な氷河は簡単には消えないが、このまま暖かくなり続ければ大きく縮む」という研究が紹介されることがあります。未来がどうなるかは今まさに研究が進んでいる最中なので、「何年に消える」といった断定はできません。だからこそ、私たち一人ひとりが電気の使い方やゴミの減らし方など、身近なところから温暖化を止める行動を積み重ねていくことが大切なんだと思います。
氷河の将来予測は研究によって数値が異なり、現在進行形で更新されています。特定の年を「消滅する年」と断定する情報には注意し、公的機関や最新の研究発表を確認するようにしてください。
まとめ:アレッチ氷河が教えてくれること
アレッチ氷河は、ヨーロッパ最大級の氷の川であると同時に、地球の変化を静かに教えてくれる世界遺産です。その絶景の裏側では、少しずつ進む後退という現実もありました。アレッチ氷河を知ることは、遠いスイスの話ではなく、私たちの毎日の暮らしと地球のこれからを考えるきっかけになります。同じスイスの世界遺産であるレーティッシュ鉄道の絶景記事も、あわせて読んでみてくださいね。

自由研究コーナー
【小学生むけ】知ってた?氷河はどうして動くの?
答え:氷河は、上に降り積もった雪の重みで下の氷が少しずつ押しつぶされ、坂道にそってゆっくりすべり落ちるように動きます。だから「氷の川」と呼ばれるんです。
まめ知識:アレッチ氷河が流れる速さは1年でおよそ150〜200m。人が歩けば数分の距離を、氷は1年かけて進むんですね。
【中学生むけ】知ってた?氷河がとけると何がわかるの?
答え:氷河がどれだけ後退したかを調べると、その地域がどれくらい暖かくなったかがわかります。氷河は地球の気温変化を記録する「大きな温度計」なのです。
まめ知識:アレッチ氷河は1870年ごろから合計で約3.2kmも後退したと報告されています。氷がとけた場所には、新しく植物が生え始めています。
【高校生むけ】知ってた?氷河が世界遺産になった理由は?
答え:絶景であることに加え、氷河がつくった地形と、氷がとけた後に植物が広がっていく「植生の遷移(せんい)」を観察できる点が、学術的に高く評価されたためです。
まめ知識:氷がとけた土地に最初に生える植物を調べる研究は、気候変動が生き物にどんな影響を与えるかを知る手がかりになっています。
スイスにはアレッチ氷河のほかにも、レーティッシュ鉄道をはじめ魅力的な世界遺産がたくさんあります。気候変動というテーマでは、海の世界遺産で起きているサンゴの白化現象もあわせて読むと、地球の今がより立体的に見えてきますよ。