SWITZERLAND × JAPAN

レーティッシュ鉄道と箱根登山鉄道
姉妹提携で結ばれた2つの山岳鉄道

スイスと日本、海を越えた鉄道の縁

※記事内の画像はイメージです

「イッテQ」をはじめ、テレビの旅番組でよく映るスイスのレーティッシュ鉄道。調べていくうちに、思わず「えっ」と声が出てしまったことがありました。あの真っ赤なスイスの列車が、実は箱根とふかい縁で結ばれていたんです。今回はそんなスイスと日本の意外なつながりを、私OWT編集部がわかりやすくまとめてみました。

I. 「姉妹提携」ってどういう関係?

箱根登山鉄道の公式沿革によると、両鉄道が姉妹提携を結んだのは1979年(昭和54年)6月1日。レーティッシュ鉄道の公式サイトでも、両者のパートナー関係は1979年から続いていると説明されています。人の姉妹のように、お互いを応援し、交流を続けていく——そんな関係が40年以上前から結ばれているわけです。

POINT

公式に確認できる呼び方は、日本側が「姉妹提携」、スイス側がsister railway partnershipです。「友好鉄道協定」などと紹介されることもありますが、これは説明上の通称。協定書の正式なタイトルまでは公表資料では確認できないため、この記事では「姉妹提携」で統一しています。

II. なぜ、この2つが結ばれたの?

急な斜面をスイッチバックで登る箱根の山岳鉄道の電車と沿線に咲くあじさいや緑深い夏の山の風景
急勾配をスイッチバックで越えていく箱根登山電車。※イメージ

縁のはじまりは、提携よりずっと前にさかのぼります。レーティッシュ鉄道の公式説明によると、その起点は1912年。日本の技術者が、箱根の難しい山岳地形に鉄道を通すためのお手本として、レーティッシュ鉄道のベルニナ線を選んだことにあるとされています。

なぜベルニナ線だったのか。それは、この路線が歯車レール(ラック式)を使わず、普通の鉄道と同じ車輪の摩擦(粘着式)だけで急な坂を登る山岳鉄道だったからです。箱根も当初はアプト式(歯車式)を採る案がありましたが、最終的には粘着式を選び、スイッチバックを組み合わせて急勾配を克服しました。「歯車なしで急坂を登る」という同じ思想でつながっているんですね。

※1912年に誰がどのように調査したのか、その後どんな経緯で1979年の提携に至ったのかは、公式資料では詳しく語られていません。この記事でも人物名などは断定せず、確認できた事実のみを紹介します。

III. 似ているところ・違うところ

比べるのは、箱根登山鉄道の登山電車区間(箱根湯本〜強羅)と、そのお手本になったベルニナ線です。同じ「粘着式の山岳鉄道」という兄弟でありながら、数字を並べるとキャラクターの違いが見えてきます。

項目 箱根登山鉄道 ベルニナ線
勾配方式 粘着式 粘着式
最急勾配 80‰ 70‰
最高標高 約541m(強羅駅) 2,253m(オスピツィオ・ベルニナ)
軌間 1,435mm(標準軌) 1,000mm(狭軌)
開業 1919年6月1日 1910年

おもしろいのは、同じ粘着式なのに最急勾配は箱根のほうが急(80‰)だということ。箱根は出山信号場・大平台駅・上大平台信号場の3か所でスイッチバック(ジグザグに折り返して高度を稼ぐ方式)を使い、この急坂をこなしています。一方のベルニナ線は、標高2,253mという桁違いの高所を、開けた山岳地帯を長い距離をかけて越えていく。似た思想でも、地形に合わせた答えの出し方はそれぞれなんですね。

まぎらわしい注意点:箱根の「早雲山駅(約750m)」は登山電車ではなくケーブルカーの駅です。登山電車の最高地点は強羅駅の約541m。標高を比べるときは混同しないよう気をつけましょう。

IV. 縁の証し:交流の記念いろいろ

雪山を背に走るスイスのレーティッシュ鉄道の落ち着いた風景と日本の山岳鉄道と比較するための対比的な一枚
姉妹の一方、スイスを走るレーティッシュ鉄道。※イメージ

40年を超える提携の間には、こんな交流の証しが積み重なってきました。

1982年 レーティッシュ鉄道から金色のカウベルが箱根へ贈られ、今も強羅駅に置かれていると報じられています。
1984年〜 ベルニナ線の3駅(サン・モリッツ/アルプ・グリュム/ティラーノ)に、日本語の駅名表示が加わりました。
2009年 提携30周年を記念し、箱根の2000形第3編成をレーティッシュ鉄道の氷河特急(グレッシャー・エクスプレス)塗装に変更。2000形は「サン・モリッツ号」の愛称でも親しまれています。
2010年〜 スイス側でも、姉妹鉄道をイメージしたデザインの機関車が走り始めました。
2016年〜 レーティッシュ鉄道のAlvra連接列車に、日本をテーマにした車内区画「Japan compartment」が設けられました。
2019年 箱根で記念式典を開催。箱根登山鉄道の開業100周年、姉妹鉄道提携40周年、箱根町とサン・モリッツの姉妹都市提携5周年が同時に祝われました。

箱根を旅するなら、氷河特急塗装の「サン・モリッツ号」に出会えたらラッキー。強羅駅のカウベルとあわせて探してみると、スイスとの縁をぐっと身近に感じられます。

自由研究コーナー

スイスと箱根の縁から、身近な世界とのつながりを考えてみましょう。

小学生向け:スイスと箱根、どこが同じ?

Q. スイスの電車と箱根の電車、どこが同じなの?
A. どちらも歯車を使わず、車輪とレールの「すべらない力(摩擦)」だけで急な坂を登る仲間です。だから遠い国どうしでも「似た者どうし」なんですね。

Q. どうして「姉妹」っていうの?
A. 人の姉妹みたいに「これからも仲良くしようね」という約束(姉妹提携)を結んだからです。おたがいを応援し合う関係になっています。

中学生向け:お手本にした理由

Q. なぜ箱根はスイスのベルニナ線をお手本にしたの?
A. 1912年ごろ、日本の技術者が箱根の急な山にどう鉄道を通すか調べていました。歯車なしで急坂を登るベルニナ線が、そのモデルにぴったりだったからです。

Q. 氷河特急の塗装の電車が箱根にあるって本当?
A. 本当です。2009年の提携30周年を記念して、箱根の2000形をレーティッシュ鉄道の氷河特急塗装に変えました。「サン・モリッツ号」とも呼ばれています。

高校生向け:同じ方式でも数字が違うのはなぜ?

Q. 同じ粘着式なのに、最急勾配が箱根80‰・ベルニナ70‰と違うのはなぜだと思う?
A. 箱根はスイッチバックを3か所組み合わせるなど、地形に合わせた設計で急勾配をこなしています。「方式が同じ=すべて同じ」ではなく、条件によって答えが変わる——技術は地形との対話なんですね。

Q. 発展学習:あなたの街にも「姉妹」の縁はある?
A. 多くの市町村には姉妹都市があります。自分の住む街の姉妹都市・友好都市を調べ、いつ・なぜ結ばれたのかを探してみると、身近な国際交流が見えてきますよ。

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